ハンセン病の基礎知識

★★★ 国立療養所栗生楽泉園発行の啓発パンフレットより抜粋しました ★★★

ハンセン病は治る病気です

  かつて治療法の無い時代には重い障害を残しやすい病気でしたが、今では何の障害もなく治すことができるようになりました。

どんな病気?

抗酸菌の一種で、結核に似た細長い桿状の菌“らい菌”感染がもとになって発症します。

感染と発症には大きな隔たりがあります。

地域や時代によって、患者数が大きく異なります。

現在の日本では、新たな発症はほとんどありません。

発症後の症状は、各個人の菌に対する抵抗力によって、大きく異なります。


らい菌の特徴

 世代時間(分裂・増殖する時間)が極めて長い(12日−13日)

 比較的低温で発育する(27−30℃)

 顔、手足、眼などに分布する末梢神経組織で増殖しやすい

 ほとんど毒性がない

  毒性がない菌ですから、菌に対して特殊な反応をするヒトだけが発症すると考えられ、感染症というよりも、免疫異常症に近い病気です。また生活・環境条件も、発病に大きく関与します。 

 

後遺症を残さないために

@早期に病変の侵攻を抑える
A“らい反応”への適切な対応
B知覚麻痺部の二次的な障害を防ぐ

@は、病気を早くみつけて早く治療することです。

Aは、できるだけらい反応が出にくい治療をすることと、らい反応を早く見つけて早く治療することです。@の早期治療によってらい反応は著しく軽減できます。

Bは、感じの弱いところ(知覚麻痺部)の障害防止です。火傷や怪我などをしていないか、毎日点検します。また、顔や手足に変形があるとさらに障害がすすみやすいので、適切な装具や、機能再建術が望まれます。


  回復者の方々によく見られる手足や顔の障害は、以前の病気による後遺症です。現在も病気が続いていることを示すものではありません。
 
  

治療

  化学療法は 1943年にアメリカのカーヴィル療養所で、プロミンの有効性が報告されたことに始まります。
  静脈注射のプロミンに代わって、錠剤のDDSが開発され、世界のハンセン病対策は大きく第一歩を踏み出しました(プロミンとDDSの有効成分は同じ)。
  しかしDDSを長期間使っていると徐々に効きにくくなり、DDSに対する薬剤耐性が、世界各地で報告されるようになりました。
  そこで研究が重ねられ、1982年、ハンセン病の最も効果的な治療法として、WHOは多剤併用治療(Multidrug Therapy: MDT)を推奨しました。

 

   MDTの普及とともに、世界の患者数は、著しく減少しました。
 複数の薬剤を使うので、かつてのDDs単剤治療に比べて再発率はきわめて低く、耐性菌の出現も大きく抑えられます。また効率のよい殺菌力と抗炎症作用によって、らい反応の頻度と重症度は、大きく軽減されました。

 MDT方式では、一定期間の治療を終えると自動的に患者登録から除かれるため、統計上の患者数は急速に減少しました。1985年、有病率が10,000人に1人以上の国は122カ国ありましたが、2000年末には12カ国、2003年には10カ国となりました。

 ところが新患者数には、10数年来著名な変化がなく、毎年約60万人が新たに診断されています。

 かつて、未治療の多菌型患者が重要な感染源と考えられていましたが、MDTで患者さんを治療するだけでは、新患者数が減らないという現実に直面しています。近年新たに得られた疫学的事実を基に、より本質的な対策が検討されています。

http://www.who.int/lep
7th WHO Expert Committee on leprosy June 1997
TDR/Nature Reviews Microbiology DIsease Watch(No.2, November 2003)

 

世界の現状

  近年世界の患者数は減ってきました。しかし今なお多くの患者さんが出る国が残っています。また流行国の多くは、同じ国内でも有病率が不均一で、多発地域に的を絞った対策を行なっています。初期の症状を発見して早期治療を行なうという現在の対策は、さらに推進しなければなりません。

地域(WHO分類)

人口(億人)

新患者数

アフリカ地域

6.0

48,248

アメリカ地域

7.9

39,939

東地中海地域

4.7

4,665

東南アジア地域

15.0  

520,632

西太平洋地域

16.0

7,154

ヨーロッパ地域

8.6

34

世界の総人口

58.2*

620,672

 

 

*人口は、1999年の統計より(2000年の総人口は60億を越えている)

患者数は、2003年1月、110カ国からの報告より

 

 

近 年 の 動 き

     らい菌に特異的な抗体(PGL−I)の測定は、臨床や疫学検査で広く使われています。また信頼性の高い皮膚テストや有効なワクチンの開発、らい菌の神経親和性や神経障害の発生機序に関する研究、らい反応による障害予防に関する臨床試験などが行なわれています。

  近年、らい菌の遺伝子がすべて判読されました。さらに菌には遺伝子多型があることも解り、これらの遺伝子解析によって、感染経路が解読できる日もくるでしょう。またヒトの遺伝子解析は、感染・発症の機序に関する研究を大いに刺激しています。

  菌の遺伝子解析によって、その菌が薬剤耐性を持っているかどうかが判ります。私達はこの検査を、実際の治療の場で使っていますし、特に再発例の治療では重要な検査となっています。

<ミヤンマーでの調査>

☆ 首都ヤンゴンの国立医学研究所は、1999年以降ミャンマーのバゴー管区にある小さな村で、調査を続けています。1つは、感染と発病に関する調査です。これまでの調査で、住民の30%以上は、多くの場合30歳くらいまでに感染し、このうちほとんどが発病せず、自然に治癒していると考えられました。

  しかし4年間で、3人が発病しました。いずれもきわめて初期の病変で、障害を残さず治りました。

  感染者の中から発症予備軍の選択が可能かどうか、また効果的な予防投薬についても検討しています。

☆ もう1つは、薬剤耐性の検査です。新患者数の減らない流行地では、耐性菌の関与も否定できません。そこでこの検査を前記の研究所でもできるように、必要な設備を置き、技術指導を終えました。

  私たちはNGO(ニルヴァーナ:代表 並里)として、上記の治療に関する資金と技術指導を提供しています。草の根レベルの技術協力を通じて、現地の研究者が現地住民のために、よりよいハンセン病対策を発展させていくことが望まれます。

 

 

日 本 国 内 で は

 国内ハンセン病回復者の多くは、多剤併用治療(MDT)が普及する前の治療で治っておられるので、稀に再発が見られます。再発しても早期に適切な治療を受ければ、何ら障害なく治せます。またこの時、薬剤耐性の検査をして、各々の患者さんに最も適した薬を選択することができます。

 回復者の中には、重度の障害を持つ方がおられます。さまざまな外傷を受けやすいので、日常生活の中でもきめ細かい注意が必要です。また高齢化と共に、一般的な成人病も増えています。最寄りの医療機関で、“自由に”診療を受けていただきたいものです。

 

 









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